はじめに|行きたい会社に内定。でも全国転勤があって、恋人とは遠距離のまま…
「志望度の高い会社から内定をもらえた。でも全国転勤がある…」
「希望の勤務地は出したけど、通るかは分からない。恋人とはもう2年遠距離で、このままだと離れたままになるかも」
「仕事を取るか、恋人を取るか。返事の期限が近いのに決められない」
内定が出そろう時期の大学4年生・修士2年生(早期選考なら大学3年生の冬〜春も)から、よく聞く悩みです。仕事と恋愛のどちらも大事だからこそ、決めきれないのは自然なことです。
結論から言うと、「仕事か恋人か」の二択で決める前に、まず内定先の人事に「転勤の中身」を確かめ、恋人とは「別れるか続けるか」ではなく「いつ・どこで暮らしたいか」を話してください。この2つがそろうと、辞退するかどうかは思っているより決めやすくなります。
「全国転勤あり」と書かれていても、実際にどこへ、どれくらいの頻度で、何年ごとに動くのかは会社によってまったく違います。希望の勤務地がどれくらい通るのかも同じです。分からないまま悩むと、どちらを選んでも「確かめておけばよかった」が残ります。
・全国転勤で悩む学生は多い。迷うのは珍しいことではない
・辞退を決める前に、配属の決まり方・転勤の頻度と範囲・勤務地を限定できる制度などを人事に確かめる
・労働条件の書面(労働条件通知書など)には、2024年4月から勤務地が「どこまで変わり得るか」も書かれることになった
・恋人とは「別れるか続けるか」より先に、「何年なら離れて暮らせるか」「いつ・どこで一緒に暮らしたいか」を話す
・最後は「5年後、どこで誰とどう働いていたいか」で決める。辞退するなら、決めた時点ですぐ電話で伝える
この記事では、全国転勤を理由に悩む学生がどれくらいいるか、辞退の前に人事に確かめたいこと(聞き方の例文つき)、恋人との話し方、3つのパターン別の決め方、辞退すると決めたときの伝え方まで、順番に紹介します。
内定を辞退すべきかどうかの一般的な考え方は、こちらの記事でも解説しています。この記事は「全国転勤」と「遠距離恋愛」が重なった場面に絞って書いています。
全国転勤で迷う学生はどれくらいいる?
転勤があるかどうかを気にする学生は多く、転勤を理由に内定を辞退したことがある学生も1割ほどいるという調査があります。迷っているのは、あなただけではありません。
学生向けアプリを運営するペンマークが2025年3月に、同社のサービスを利用する大学生611人に聞いた調査では、次のような結果が出ています。
- 就職先を選ぶときに転勤の有無を「非常に重視する」「やや重視する」と答えた人は、合わせて約7割(70.5%)
- 転勤がある企業への応募を避けたことがある人は42.3%
- 転勤を理由に内定を辞退したことがある人は11.3%
つまり「転勤があるならやめておこう」と考える学生は少なくありません。転勤は「あるかないか」ではなく、「自分の暮らし方と両立できる中身かどうか」で考えるのが大事です。
気をつけたいのは、「全国転勤あり」の一言だけで判断してしまうことです。
- ✕ よくある決め方
「全国転勤=どこに飛ばされるか分からない」と思い込み、確かめずに辞退する
「希望の勤務地は出したから、たぶん通るはず」と、確かめずに承諾する - ○ おすすめの決め方
転勤の頻度・範囲・最初の配属の決まり方を人事に聞いてから考える
恋人と「何年なら離れて暮らせるか」を話してから考える
両方の答えをそろえてから、承諾か辞退かを決める
やることは、まず「分からないこと」を減らすことです。次の章で、人事に確かめたいことを具体的に紹介します。
辞退する前に、人事に確かめたい5つのこと
辞退するか決める前に、「最初の配属の決まり方」「希望の通り方」「転勤の頻度と範囲」「勤務地を限定できる制度」「家庭の事情への配慮」の5つを人事に聞いておきましょう。
「全国転勤あり」と書いてある会社でも、実際には「入社後しばらくは本社か地元の支店」「異動は数年に1回で、エリアの中だけ」という会社もあれば、数年ごとに全国を回るのが当たり前の会社もあります。この違いで、遠距離恋愛との両立のしやすさは大きく変わります。
- ①最初の配属は、いつ・どう決まるか
配属先が分かる時期(内定式のころか、入社後の研修の後か)と、希望を出す機会があるか - ②希望の勤務地は、どれくらい通っているか
「希望の地域に配属された人は多いか」「希望が通らなかった人はどこに配属されたか」など、これまでの傾向 - ③転勤の頻度と範囲
何年くらいで異動することが多いか、異動は全国か、地域ブロックの中か、本社と支店を行き来するのか - ④勤務地を限定できる制度があるか
地域を限定して働くコースや、途中でそのコースに変える制度があるか。ある場合、給料や仕事内容はどう変わるか - ⑤結婚や家族の事情に配慮する仕組みがあるか
結婚したときに勤務地を相談できるか、配偶者の転勤についていける制度があるか
あわせて、内定のときや入社前にもらう労働条件の書面(労働条件通知書など)も見ておきましょう。厚生労働省によると、2024年4月から、会社は労働契約を結ぶときに、最初の就業場所だけでなく「就業場所の変更の範囲」も示すことになっています。「会社の定める場所」「全国の事業所」などと書かれていれば、その範囲で異動があり得るということです。書面がまだ手元にない場合は、人事に確認するときに「勤務地の変更の範囲はどう書かれますか」と聞いてもかまいません。
聞き方は、メールでも、人事面談や内定者向けの面談の場でもかまいません。メールなら、たとえば次のように聞けます。
件名:配属・勤務地についてのご質問(◯◯大学 氏名)
株式会社◯◯
人事部 ◯◯様
お世話になっております。内定のご連絡をいただきました、◯◯大学◯◯学部4年の◯◯◯◯です。
改めまして、内定のご連絡をいただき誠にありがとうございました。
入社に向けて具体的に考える中で、配属と勤務地について伺いたいことがあり、ご連絡いたしました。
・最初の配属先が決まる時期と、希望をお伝えできる機会があるか
・これまでの新入社員の方は、希望の地域に配属されることが多いか
・入社後の異動は、どのくらいの頻度・範囲で行われることが多いか
・勤務地を限定して働ける制度があるか
お答えいただける範囲で構いません。お忙しいところ恐れ入りますが、ご教示いただけますと幸いです。
◯◯大学 ◯◯学部 ◯◯学科 4年
氏名
電話番号:000-0000-0000
メール:xxxx@xxxx
聞くときは、次の点に気をつけてください。
- ✕ NG:「転勤は嫌なので、地元に配属してもらえますか」(約束を求める聞き方は、相手も答えにくい)
- ○ OK:「これまではどうだったか」「どんな仕組みがあるか」と、事実を聞く
- 恋人のことまで詳しく話す必要はありません。聞かれたら「将来の生活も考えて、具体的に知っておきたい」で十分です
- 人事の答えは「これまでの傾向」で、あなたの配属を約束するものではありません。「希望が通らなかった場合」も想定しておきましょう
人事以外に、内定者懇親会や社員との面談で、実際に転勤を経験した先輩に「何年目でどこに異動したか」を聞くのもおすすめです。やることは、返事の期限より前に、この5つの答えをそろえることです。
恋人とは「別れるか続けるか」より先に、「いつ・どこで暮らしたいか」を話す
恋人と話すときは、いきなり「別れるか、続けるか」を決めようとせず、「何年なら離れて暮らせるか」「いつ・どこで一緒に暮らしたいか」を先に話しましょう。
「別れるか続けるか」は、いちばん最後に出てくる答えです。そこから話し始めると、お互いに「仕事と自分のどっちが大事なの」という話になりやすく、どちらかが我慢するか、感情的にぶつかるかになりがちです。先に「どう暮らしたいか」をすり合わせると、転勤があっても続けられる形があるのか、それとも本当に両立が難しいのかが見えてきます。
話しておきたいのは、たとえば次のようなことです。
- 今の遠距離を、あと何年くらいなら続けられそうか
- 一緒に暮らしたい時期の目安はあるか(「数年以内に」「まだ考えていない」など)
- どちらかが住む場所を動ける可能性はあるか(相手の仕事は転勤や転職ができるか)
- 会う頻度や、交通費の負担をどうするか
- 希望の勤務地が通った場合、通らなかった場合、それぞれどうしたいか
話すときは、人事に確かめた事実を一緒に伝えると、話が具体的になります。
- ✕ NGな切り出し方
「転勤あるけど、どうしよう…」(相手も何を答えればいいか分からない)
「仕事を選んだら別れるってこと?」(いきなり結論から聞く) - ○ OKな切り出し方
「人事に聞いたら、最初の配属は◯月に決まって、希望が通る人が多いみたい。ただ、◯年くらいで異動があるらしい。そのうえで、◯年くらい離れて暮らすのはどう思う?」
もし恋人から「希望の勤務地が通らなかったら別れる」と言われていても、その言葉だけで決める必要はありません。その言葉の裏には、「先が見えない不安」や「離れたままでいるのがつらい」という気持ちがあることも多いからです。何が不安なのかを聞いてみると、「何年で戻れるか分かれば待てる」「結婚の時期の話ができれば安心できる」など、別の答えが出てくることもあります。
ただし、話し合いのうえでも「どうしても条件が合わない」と分かることはあります。そのときに決めるのは、恋人でも会社でもなく、あなた自身です。次の章で、決め方を整理します。
承諾か辞退か。3つのパターンで考える
人事の答えと恋人との話がそろったら、「どちらかを優先する」ではなく「自分がどう暮らしたいか」で、次の3つのパターンのどれに近いかを考えましょう。
決める前に、次の3つの質問に自分の言葉で答えてみてください。
- 質問1:5年後、どこで、誰と、どんなふうに働いていたいか
仕事の中身・住む場所・一緒にいたい人のうち、どれを一番ゆずれないか - 質問2:恋人がいなかったとしても、この会社に行きたいか
「はい」なら、この会社でやりたいことがはっきりしているということです - 質問3:この会社でやりたいことは、ほかの会社でもできるか
同じ業界・職種で、勤務地を選びやすい会社がないかを考えてみる
そのうえで、次のように考えられます。
- パターンA:希望の勤務地が通りやすく、恋人も数年の遠距離なら続けられる
→ 承諾して、配属の希望をしっかり伝える。転勤があったときの暮らし方は、配属が決まった後にもう一度二人で話す - パターンB:質問2が「はい」で、仕事の中身を一番ゆずれない
→ 承諾して、転勤があっても関係を続けられる形を二人で探す。結婚後に勤務地を相談できる制度があるかも確かめておく。それでも折り合えないなら、どちらかがゆずるしかないことも受け止めておく - パターンC:住む場所(恋人の近くで暮らすこと)を一番ゆずれない
→ 辞退して、勤務地を選べる会社を探すのも立派な選択です。地域を限定して働けるコースがある会社、転勤のない会社、拠点が1か所の会社などが候補になります。ただし、辞退するのはほかの選考や内定の状況を確かめてからにしましょう
迷ったときに避けたいのは、「恋人に言われたから辞退した」「親や周りに言われたから承諾した」と、自分の答えを持たないまま決めることです。どちらを選んでも、後で迷いが出たときに支えになるのは「自分で考えて決めた」という感覚です。
なお、返事の期限までに人事の答えや恋人との話がそろわない場合は、内定先に期限の延長をお願いすることもできます。延長は会社次第ですが、「配属や勤務地について確認したうえで、後悔のない形でお返事したい」と具体的な日付つきで相談すれば、検討してもらえることがあります。承諾書の重さや、承諾前に確かめたいことは、内定承諾の考え方と、承諾前に聞いておきたい質問の記事も参考にしてください。やることは、3つの質問に答えを書き出してから、パターンを選ぶことです。
勤務地も含めて、ひとりで決めきれないときは?
転勤のある会社に行くか、勤務地を選べる会社を探し直すか。ひとりで決めきれないときは、キャリアアドバイザーに無料で相談する方法もあります。
しゅんダイアリーエージェントは、YouTubeチャンネル「しゅんダイアリー」が運営する新卒向けの就活エージェントです。記事や動画だけでは答えきれない「自分の場合はどうすればいいか」に、キャリアアドバイザーが1対1で答えます。面談はオンライン(Zoom)で、内定が出たあとの企業選びも一緒に考えます。費用はかからず、紹介された企業は断れて、いつでも利用をやめられます。
辞退すると決めたら?伝え方と注意点
辞退すると決めたら、決めた時点ですぐに、まず電話で伝えましょう。理由は「勤務地の条件を考えた結果」と簡潔に伝えれば十分です。
会社はあなたの入社に向けて準備を進めていて、ほかの学生の採用を締め切っていることもあります。連絡が遅くなるほど、相手の負担は大きくなります。また、一度伝えた辞退は取り消せないことが多いので、伝える前に気持ちが固まっているかをもう一度確かめてください。
- ✕ NGな辞退の仕方
期限が過ぎるまで連絡しない
メール1通だけ送って、その後の電話に出ない
恋人とのことを長々と説明する - ○ OKな辞退の仕方
決めた時点ですぐ電話する(つながらなければメールも送る)
お礼 → 辞退の意思 → 簡単な理由 → お詫び の順で伝える
電話の後、同じ内容をメールでも送って記録を残す
電話では、たとえば次のように伝えます。
あなた:お世話になっております。◯◯大学4年の◯◯です。先日は内定のご連絡をいただき、本当にありがとうございました。大変申し訳ないのですが、内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。配属や勤務地について詳しく教えていただいたうえで、将来の生活の場所も含めて考えた結果、勤務地を限定して働ける道を選ぶことにしました。ご丁寧に対応していただいたのに、ご期待に添えず申し訳ございません。
恋人のことを理由として話すかどうかは、自分で決めてかまいません。「将来の生活の場所を考えて」と伝えるだけでも十分です。嘘の理由を作る必要はありませんが、細かい事情まで説明する必要もありません。
すでに内定を承諾した後でも、辞退すること自体は法律上できると考えられています(民法627条)。ただし、承諾後の辞退は相手への影響がより大きいので、決まった時点ですぐに、より丁寧に伝えましょう。また、学校推薦で応募した会社の場合は、辞退の前にキャリアセンターや研究室の先生に相談してください。やることは、決めたらその日のうちに電話することです。
まとめ|「仕事か恋人か」の前に、転勤の中身と二人の暮らし方を確かめる
全国転勤のある会社から内定をもらい、遠距離恋愛との両立で迷ったら、二択で決める前に「転勤の中身」と「二人がどう暮らしたいか」を確かめましょう。
人事には、最初の配属の決まり方、希望の通り方、転勤の頻度と範囲、勤務地を限定できる制度、家庭の事情への配慮を聞く。恋人とは、何年なら離れて暮らせるか、いつ・どこで一緒に暮らしたいかを話す。そのうえで「5年後、どこで誰とどう働いていたいか」で決める。辞退するなら、決めた時点ですぐ電話で伝える。この順番で考えれば、どちらを選んでも「確かめずに決めた」という後悔は減らせます。
それでも「自分の場合はどうすればいいか分からない」というときは、ひとりで抱え込まずに、キャリアアドバイザーに今の状況を話してみてください。
全国転勤と遠距離恋愛に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 配属や転勤のことを人事に聞いたら、印象が悪くなりませんか?
A. 内定後に、配属の決まり方や転勤の頻度を聞くこと自体は、入社に向けて真剣に考えている証拠として受け止められることが多いです。「転勤は嫌です」と条件を突きつける聞き方ではなく、「これまではどうだったか」「どんな制度があるか」と事実を聞く形にすれば、心配しすぎなくて大丈夫です。
Q2. 希望の勤務地を出せば、通りますか?
A. 会社によって違います。希望が通りやすい会社もあれば、会社の事情で決まることが多い会社もあります。人事の説明は「これまでの傾向」で、あなたの配属を約束するものではないので、「通らなかった場合にどうするか」も考えておきましょう。
Q3. 恋人の存在を理由に内定を辞退するのは、甘えですか?
A. 甘えではありません。どこで、誰と暮らしたいかは、仕事選びの大事な条件のひとつです。ただ、恋人に言われたからではなく、自分で「住む場所を一番ゆずれない」と考えたうえで決めることが大切です。
Q4. 内定を承諾した後で、やっぱり転勤が無理だと思ったら辞退できますか?
A. 承諾後でも、辞退することは法律上できると考えられています(民法627条)。ただし、会社への影響は承諾前より大きいので、決めた時点ですぐに電話で、丁寧に伝えましょう。学校推薦の場合は、先にキャリアセンターに相談してください。
Q5. 転勤のない会社や、勤務地を選べる会社はどう探せばいいですか?
A. 求人の「勤務地」や「転勤」の欄を見るほか、地域を限定して働けるコースがあるか、拠点が1か所の会社かなどを確かめるのが近道です。大学のキャリアセンターや、キャリアアドバイザーに「勤務地を限定したい」と条件を伝えて相談する方法もあります。
