志望動機は「きれいな褒め文章」を書く場ではなく、自分のストーリーと会社のビジョンを“説得力のある形で重ねる”場所です。 業界によって刺さる型も違うので、「共通の型+業界ごとのツボ」を押さえられるかが、内定率の差になります。
新卒でP&GとLVMH(ルイ・ヴィトンなどを持つグループ)のマーケターとして働いた後、独立。15年以上就活支援に関わり、『確実内定』などの就活本の執筆や、AI添削プロンプトの提供を通じてES・面接対策を解説している。
良い志望動機に共通する“型”とは?
受かる志望動機の基本構成は?
トイさん:受かる志望動機には、実はシンプルな3ステップがあります。 ①会社・業界に関心を持つきっかけになった自分の経験(原体験)を書く ②その経験と、企業のビジョン・取り組みがどう重なるかを書く ③その企業で自分がどう力を発揮し、何を実現したいかを書く この3つを順番に入れるだけで、内容さえ伴えば「いい志望動機」の形になります。
良い志望動機は「自分の過去→会社の今→自分の未来」というストーリー構造になっている。 冒頭で必ず自分の具体的な経験(子どもの頃・地元での出来事・アルバイトなど)を置き、その経験から“なぜこの業界・この会社に惹かれたか”を説明し、その上で「ここでこう貢献したい」と締めると、一貫した説得力が生まれます。
冒頭に“自分の経験”を入れる重要性
なぜ原体験から書き始めるべき?
トイさん:今回のM&A志望の方の志望動機が良かった最大の理由は、「地元の花火大会が縮小してショックだった」という自分の原体験から始まっていたことです。 M&Aは身近に感じづらい業界ですが、その方は「地方企業の衰退→地元イベントの縮小→地方創生に関わりたい」という流れを示していて、「だからM&Aを通じて地方を救いたい」がすっと腹落ちしました。
トイさん:もしここを飛ばしていきなり「地方創生に貢献したいからです」と書いてしまうと、「なぜあなたが?」という疑問が解消されず、薄く見えてしまいます。
志望動機の冒頭は「会社の褒めポイント」ではなく「自分の具体的なエピソード」から入る。
会社のことから書き出すと「御社は業界◯位のリーディングカンパニーで…」のような“誰でも書ける褒め作文”になりがちで、あなた個人が見えません。
最初に自分の経験(地元で見た変化、自分が感じた悔しさ・喜び、アルバイトでの気づきなど)を語り、「その経験がきっかけで御社に興味を持った」とつなげることで、オリジナルな志望動機になります。
企業理解と“その会社ならでは”のつなげ方
企業ごとにどう差別化する?
トイさん:志望動機の差別化が難しいのは、M&Aやコンサル、商社のような「人が価値の業界」です。どこも「顧客に寄り添い、高い専門性で価値を出す」と言っているので、会社ごとの差が見えにくい。
トイさん:そこで効いてくるのが、「その会社が直近で何をしているか」を調べ、その施策や経営者の発言と、自分のビジョンがどう重なるかを具体的に書くことです。
トイさん: 例えば、社長インタビューやIR資料、新規事業のニュースを読んで「御社は◯◯という戦略で地方の事業承継に取り組んでいる。そのやり方が、自分の地元で見た課題感と噛み合うからこそ、この会社で取り組みたい」というように重ねていくイメージです。
「業界が好き」止まりだとほぼ全社共通の志望動機になるので、①IR情報・ニュース・口コミサイト(オープンワークなど)で会社の“今の戦略・取り組み”を知る ②その中で特に惹かれた具体例と、自分の価値観・経験をセットで語る ③「だから同じ業界の中でも御社でなければならない」と言い切る、という流れを必ず入れると差別化になる。
同業他社と比較し、「他社は◯◯だが、御社は△△な点が自分の志向に近い」と書くのも有効です。
共通している“良い志望動機”の要素
何を必ず入れておくべき?
トイさん:今回の志望動機で特に良かった共通要素は3つです。 1つ目は、冒頭に必ず自分の原体験を入れていたこと。 2つ目は、企業研究の中でも“直近の取り組みやトップの発言”まで踏み込んで調べ、それと自分のビジョンを接続していたこと。 3つ目は、社会貢献(地方創生)と自己実現(トッププレイヤーとして活躍したい)のバランスが良かったことです。
トイさん:社会貢献だけに振れていると「利益を後回しにしそう」と見られるリスクがあり、自己実現だけだと「自己中心的」と見られがちですが、その両方を自然に織り込めていると、「この人はビジネスとして結果も出しながら、社会にも価値を返してくれそうだ」と伝わります。
良い志望動機には、①自分の人生のストーリー(原体験)②会社の戦略・ビジョンとの重なり③そこで実現したい未来(社会への価値+自分の成長・キャリア)の三つ巴が必ず入っている。
どれか一つでも欠けると、「あなたの話が薄い」「会社への理解が浅い」「何をしたい人か分からない」と評価されやすくなります。
逆に“刺さらない”志望動機とは?
どんな書き方がNG?
トイさん:一番危ないのは、「生成AIだけで作ったような志望動機」です。AIが作る文章は、会社を褒めるフレーズ(リーディングカンパニー、イノベーション、グローバル、社会貢献…)には長けていますが、あなた本人のエピソードが一切入っていません。読む側からすると、「業界名と社名を変えればどこにも出せる文章」に見えてしまう。
トイさん:また、御社は〜御社は〜と、会社の強みを並べるだけで終わるパターンもNGです。会社は自分の強みを一番よく分かっているので、「知ってるよ」と思われるだけで、「なぜそれに惹かれたのか」が分からない限り、あなたの志望度も人柄も伝わりません。
「AI丸投げ」「会社褒めだけ」の志望動機は、どの企業にも出せる汎用文にしかならない。
生成AIは“たたき台”として使い、そこに必ず①自分だけの原体験②その経験から生まれた価値観や学び③企業のどの取り組みにその価値観が響いたか、を肉付けしていく必要があります。
志望動機は「相手を褒める場」ではなく「自分の人生×相手のビジョンの接点を語る場」です。
業界別の“刺さる志望動機”のツボ
広告業界なら?
トイさん:広告業界は「メッセージを広く届ける仕事」です。なので「自分の発信や工夫で、何かが広がっていった経験」を起点にするのが王道です。 自分のSNSでフォロワーを増やした、文化祭の企画を工夫して集客した、サークルのイベントを告知して動員が増えた…といった経験があるなら、「個人の力でここまで広げられた。でも広告会社に入れば、それを何倍・何百倍にも広げられる。そのスケール感に魅力を感じた」と語ると、一人でできることと、広告の力の差分が具体的に伝わります。
食品・消費財メーカーなら?
トイさん:日常で触れてきた製品を扱うメーカーは、「その商品と自分の生活の接点」が必須です。「子どもの頃から食べてました」だけでは弱いので、直近にどう興味を深めたかもセットで語る必要があります。
トイさん:例えば、「近所のスーパー3店舗を回って御社商品の棚を比較したら、どの店でも必ずこの位置に置かれていた。その背景にある売り場戦略を自分なりに分析し、IR情報と照らし合わせたところ、◯◯という戦略が見えた。それを実際に仕掛ける側に回りたいと考えた」といった具合です。
IT業界なら?
トイさん:ITは「IT」という括りが広すぎて、まず“何系か”を理解しているかが問われます。アプリ・SaaS・インフラ・SI…など、全く仕事の中身が違うので、「ざっくりIT大手」のまま受けているとすぐに見抜かれます。
トイさん: その上で、ITでは「会社志望動機」より「職種志望動機」の比重がやや高くなりがちです。自分が志望する職種(エンジニア、PM、セールスなど)に多い人物像や、求められるスタイルを調べ、それと自分の特性・経験(問題分解が得意、ユーザー視点で考えるクセがある、泥臭い検証を繰り返せる)を結びつけて語る方が、現場のイメージとフィットします。
コンサル業界なら?
トイさん:コンサルの志望動機で差がつくのは「ロジカルさ」ではありません。ロジカルシンキングは「あって当たり前の前提」で、わざわざアピールするのは「私は人間です」と言っているレベルです。 むしろ効いてくるのは、「人を熱意で説得する力」です。
トイさん:クライアントはロジックだけでは動かないので、「正しいことを、相手が腹落ちする形で伝えきる」経験を語れるかが鍵になります。
トイさん: たとえば、「ゼミの方針を変えるために教授と徹底的に議論し、自分から仮説とデータを提示して納得してもらった」「部活で非合理な慣習を変えるために、先輩・同期・後輩全員と個別に対話し、理解を得ながら改革した」といったエピソードがあれば、それを軸に「だからコンサルタントとして、クライアントの変革を熱意を持って支援したい」とつなげていくと、差別化された志望動機になります。
刺さる志望動機のポイントは業界によって様々。その業界の特徴を踏まえた上で、志望動機に落とし込もう。
「時間がない」ときの調べ方
何から見ればいい?
トイさん:全部の企業に足で通う時間はないので、まずはIR情報の「個人投資家向けページ」を見るのがおすすめです。そこには、「我々は今後◯◯領域に力を入れていきます」「中期的に△△のシェアを狙います」のような、初心者向けの会社の“今とこれから”がまとまっています。
トイさん:そこに書いてある重点領域や戦略と、自分の経験・興味がどう結びつくかを考え、その線を志望動機の中でしっかり言語化していくと、短時間でも“会社ごとの色”を出すことができます。
時間がないときは“全部調べよう”とせず、IR(個人投資家向けページ)だけを見るのが最速で最も精度が高い。
IRには会社が今後注力する領域・中期戦略が要約されており、「会社の今」と「これから」の本質が一発でつかめる。
志望動機で大事なのは“深い知識”ではなく“会社の未来と自分の経験・価値観の接点を語れること”なので、短時間の調査ではIRだけに集中するのが最もコスパが良い。
まとめ
良い志望動機の共通構成は、①自分の原体験 ②企業のビジョン・取り組みとの重なり ③そこで実現したい社会への価値と自己実現、という三つのパーツから成ります。
冒頭でかならず自分の経験から入り、会社の“今やっていること”を調べてそこに重ね、最後に「この環境でこう貢献し、こう成長したい」と締める。
これだけで、AIやテンプレ志望動機とは一線を画す内容になります。
業界ごとに「広告なら広げた経験」「食品メーカーなら売り場観察」「ITなら職種理解と技術観」「コンサルなら熱意ある説得経験」といったツボが違うので、共通の型の上にそれぞれの業界らしさを乗せるイメージで組み立てていくと、内定率は大きく変わっていきます。
