アルバイトしかネタがない人でも、業界とのつながりを意識すれば十分戦えます。どの業界に出しても通用する“無難なガクチカ”から一歩抜けて、「だからこの業界・この会社で活きる人材です」と言える形まで持っていきましょう。
慶應卒。新卒でP&Gのマーケティング、その後LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)を経て独立。就活オタクとして数百社分の選考を経験し、『確実内定』など就活本も執筆。現在は就活支援や企業の採用アドバイスを行っている。
広告業界:面白さより“裏方としての工夫”を見せる
広告のガクチカで評価される人は?
トイさん:広告業界はキラキラしたイメージで「自分が前に出たい」タイプが集まりがちですが、実際に求められるのは、面白いアイデアや好奇心はありつつも、自分は“作る側・支える側”で成果を出せる人です。
トイさん:モデルやタレントのように表に立つ人ではなく、その人たちをどう魅せるかを考えるポジションなので、「人を活かす工夫」「企画側での工夫」をエピソードに乗せられると相性がいいです。
アルバイト版 理想ガクチカ例(塾講師)
トイさん:たとえば塾講師バイトでも、ただ「偏差値を上げました」では弱くて、次のように組み立てられると広告向きです。
① 落ちこぼれ専門の個別指導塾で、机に座ることすらできない生徒ばかりのクラスを担当していた。
② 他の講師が嫌がって辞めてしまい、自分がそのクラスを引き受けることになった。
③ 生徒一人ひとりの好きなアニメ・ゲーム・ドラマを徹底的に調べ、まずは共通の話題で「塾に来たくなる」「机に座りたくなる」状態を作ると決めた。
④ 「来週までにこのゲームどこまで進めるか勝負ね」「新作アニメどうだったか教えて」といった約束をして、勉強以外のフックで通塾習慣を作った。
⑤ そのうえで小テスト→成功体験→偏差値アップにつなげ、最終的には落ちこぼれクラス全員が標準クラスに上がった。
⑥ この経験から、主役である生徒を活かすために“裏側の仕掛け”を考え抜く姿勢が身についた。
広告のガクチカでは、「身近な環境の中でちょっとずらした発想や工夫をした」「自分は前に出るより、相手を活かす仕掛けを考えた」というストーリーが刺さりやすいです。奇抜さよりも、“普通の素材をどう面白く料理したか”を見せるイメージで組み立てましょう。
IT業界:大成果より“バグにキレず粘った過程”を見せる
ITのガクチカ、スキルより何が重要?
トイさん:日系ITの場合、学生に完璧なプログラミングスキルまでは求めていません。それより重視されるのは、トラブルやうまくいかない状況でも投げ出さない粘り強さと、コツコツ試行錯誤できる勤勉さです。
トイさん:「バグで全部壊れたからPCの電源抜いて寝ました」タイプは向いていません。その反対で、「なんで動かないんだろう」「この方法はどうだろう」と地道に手を動かせるかどうかが評価されます。
アルバイト版 理想ガクチカ例(カフェのシフトDX)
トイさん:カフェのバイトでもIT志望に寄せられます。例えばこういう構成です。
① 3〜4店舗しかない小規模チェーンのカフェでアルバイトをしていたが、シフトは紙に手書き→店長が手作業でExcelに打ち込み、ミスやダブルブッキングが頻発していた。
② 「この規模なら仕組みで解決できるのでは」と考え、まずGoogleスプレッドシートでシフト表フォーマットを作成し、店長に提案して採用された。
③ しかし現場では「結局手書きのほうが早い」と誰も入力せず、改善が進まなかった。
④ そこで“現場が楽になること”に焦点を変え、LINEのフォームから希望日を入力すると自動でスプレッドシートに反映される仕組みを作ることを決意。プログラミング未経験から半年以上勉強し、試行錯誤を続けた。
⑤ 最終的にLINE入力→スプレッドシート自動反映が実現し、店長から「もう紙には戻れない」と言われ、他店舗にも展開される仕組みになった。
⑥ この経験から、うまくいかなくても原因を変えながら地道に試す姿勢と、テクノロジーで現場の負担を減らす視点を身につけた。
IT業界のガクチカでは、「プログラミングに興味があります」が言いたいのではなく、「不便を放置せず、自分で調べて、時間をかけてでも改善しきった」プロセスを見せるのが大切です。結果の規模より、“途中で投げなかった姿勢”が評価されます。
コンサル業界:成果より“構造化と打ち手の筋の良さ”を見せる
なぜロジカルさが最優先なのか?
トイさん:コンサルは「ロジカルシンキングできて当たり前」の世界です。どんなに面白いエピソードでも、話が構造化されていないと「この人はコンサルタントの思考体力が足りない」と判断されます。
トイさん:自己PRやガクチカで重要なのは、課題→原因の仮説→打ち手を複数出す→その中から選んだ理由という“筋道”を示せているかどうかです。
アルバイト版 理想ガクチカ例(コンビニの離職率改善)
トイさん:コンビニバイトでも、ロジカルな構造を見せられます。
① 外国人スタッフが8割のコンビニでアルバイトしていたが、共通言語は片言の日本語のみで、ミスとトラブルが多く離職率も高かった。
② 課題を「言語の壁によるコミュニケーション不全」と定義し、原因を「互いの言語が通じないこと」と「そもそも訳せるチャネルがないこと」の2つと仮説。
③ 打ち手Aとして、翻訳機能付きチャットツールを導入し、スタッフ全員に母語で入力→自動翻訳で共有できるよう提案・運用した。
④ 打ち手Bとして、同じ国籍の友人紹介制度を設け、同国籍チームを増やして言語・文化の距離を縮めた。多様性は少し下がるが、定着率向上を優先した。
⑤ その結果、「誰にも相談できず辞める」スタッフが減り、半年で離職率が約4割低下。店長から「シフトが安定した」と評価された。
⑥ この経験から、問題を構造的に捉え、複数の打ち手から実現可能なものを選んで試し、結果で検証するコンサルティングマインドを身につけた。
コンサル向けガクチカでは、「何をやったか」より「問題をどう定義し、どう分解し、なぜその2つの打ち手を選んだのか」を語ることが命です。3つ以上の打ち手を無理に出すより、②のように2つの対策に絞って“なぜそれが合理的か”を説明できる方がロジカルに見えます。
商社:成果+“人に好かれる力(人間モテ)”をセットで見せる
商社で求められるのは“人間モテ”
トイさん:総合商社はずっと人気が高く、何十年も内定者のタイプがあまり変わっていません。求められるのは“人間モテ”、つまり「男女問わず、世代問わず、人に好かれる・可愛がられる力」です。
トイさん:世界中で交渉相手と関係を作り、飲みの席も含めて商売を動かしていく仕事なので、営業としての成果に加えて、“人に好かれながら売っている”雰囲気が非常に重視されます。
アルバイト版 理想ガクチカ例(居酒屋で県内1位の売上)
トイさん:飲食バイトは商社と相性が良いです。例えばこんな感じ。
① コロナ明け直後の居酒屋でアルバイトを始めたが、客数は戻りつつある一方で、お酒・料理の注文量が減り、客単価が下がっていた。
② 「今日はあの店に行きたい」と人基準で選んでもらうため、スタッフ全員に“あだ名入り名札”を提案・導入し、自分も親しみやすいキャラを意識した。
③ 常連のお客様には、一緒に飲み会に参加しているような距離感で、「今日の限定サワー、僕が一番好きなんで一杯どうですか?」など、友人に勧めるようなトークで提案。
④ 「◯◯くんがそこまで言うなら飲んじゃおうかな」と言ってもらえる機会が増え、客単価はほぼ倍増。
⑤ 自店舗は県内売上1位となり、店長から他店舗へ「◯◯の接客を真似してほしい」と言われるまでになった。
⑥ この経験から、人に好かれるコミュニケーションを通じて売上を作ることにやりがいを感じ、商社のバイヤー・営業としても現地の人に信頼される存在を目指したいと考えるようになった。
商社向けガクチカでは、「数字として強い売上成果」と「その裏にある、人に好かれるコミュニケーション」を両方見せることが大切です。効率だけで売るのではなく、「あいつがいるから飲もう/買おう」と言われるキャラを具体的なエピソードで示しましょう。
デベロッパー:土地・立地×営業的視点で“場所を活かした工夫”を語る
デベロッパーはなぜガクチカ難易度が高い?
トイさん:デベロッパー(不動産開発)は人気が高く、倍率も非常に高いので、中途半端な成果エピソードだと埋もれがちです。
トイさん:とはいえ「学生団体で◯千万円集めました」レベルじゃないと通らない訳ではなく、アルバイトでも「立地を理解して、どう勝負したか」を見せられれば十分戦えます。
アルバイト版 理想ガクチカ例(カラオケ店の集客改善)
トイさん:例えばカラオケ店の事務・売上集計バイトを次のように話せます。
① 小〜中規模チェーンのカラオケ店本部で、各店舗の売上データ集計を担当していた。
② 売上データを地図にプロットしたところ、「駅前や大通り沿いの店舗」と「大通りから1本入った店舗」で売上に大きな差があることに気づいた。
③ 売上の低い店舗は「立地そのもの」ではなく“視認性の低さ”が問題と仮説を立て、店長に「駅前で目立つ看板や誘導スタッフを置く」施策を提案。
④ 自ら駅前に立ち、「この先にカラオケがあります!」と声かけを実施したところ、自分が立った日の売上が平均+3%となった。
⑤ このデータをもとに提案書を作成し、他の売上が低い店舗でもA型看板・誘導スタッフの導入が決まり、チェーン全体の売上改善に貢献。
⑥ この経験から、土地・導線・視認性といった“場所の条件”を踏まえたうえで集客施策を考える重要性を学び、街づくりに関わるデベロッパーで働きたいと考えるようになった。
デベロッパー向けガクチカでは、「立地・人通り・視認性」といった“場所の条件”を理解したうえで、「その前提のなかでどうお客を動かしたか」を語ることが重要です。単なる販売バイトではなく、「土地条件を踏まえた戦い方」を一言でも入れると、ぐっと業界とのつながりが出ます。
金融業界:シニア層との信頼構築エピソードが強い
金融のガクチカで評価される経験は?
トイさん:銀行・証券・生保など、リテール寄りの金融では、「シニア層・富裕層とのコミュニケーション」が非常に多くなります。そのため、世代の離れた相手との地道な関係構築・クレーム対応のエピソードがあると強いです。
アルバイト版 理想ガクチカ例(高齢者向けコールセンター)
トイさん:たとえば、次のようなコールセンターの話です。
① 高齢者向け補助具を扱う小さな会社のコールセンターでアルバイトをしており、商品の使い方案内だけでなく、同じ内容のクレーム電話が何度も入ることが問題になっていた。
② 特に認知症が入ったお客様からの電話が繰り返し来て、スタッフが疲弊して辞めてしまうことが続き、責任者が悩んでいた。
③ 同じ方から同じ内容のクレームが何度も来るパターンをリスト化し、一人ひとりに直筆メモを郵送。「この電話が来たら◯◯社の○○へご連絡ください」と大きく書き、電話機の前に貼っていただくようお願いした。
④ 以降は電話がかかってきた際、「電話機の前のメモをご覧いただけますか?」と声をかけることで、毎回一から説明することなく短時間で解決できるようになった。
⑤ この仕組みのおかげで、同じ内容のクレーム対応にかかる時間が大幅に短縮され、スタッフの離職も減少した。
⑥ この経験から、高齢者の特性を理解しながら、相手を傷つけずに自分も消耗しない仕組みをつくる重要性を学び、シニア層と長期的な信頼関係を築く必要がある金融業界で力を発揮したいと考えている。
金融のガクチカでは、「シニア相手に忍耐強く、かつ工夫をしながら信頼関係を築いた」経験があると非常に相性が良いです。単に“仲良くなった”だけでなく、「相手の状況に合わせた仕組みづくり」まで踏み込めると、より評価されやすくなります。
メーカー:BtoBでもBtoCでも、“協調性+やり切り”がキーワード
メーカーのガクチカで見られていること
トイさん:メーカーは事業が多岐にわたるので、「この業務と完全に一致するバイト経験じゃないとダメ」ということはありません。ただし、社内外の多くの人と協力しながら、粘り強く成果を出せるかがかなり重要です。
トイさん:営業アシスタント、販売、BtoBの事務など「メーカーにありそうな仕事」と近いアルバイトだと、再現性をイメージしてもらいやすくなります。
アルバイト版 理想ガクチカ例(機械メーカーの営業アシスタント)
トイさん:たとえば派遣・長期バイトでの事務アシスタントでも十分です。
① 大学3年の前期で必要単位を取り切り、派遣社員として機械メーカーの営業アシスタントをフルタイムで経験した。
② 入社当初は専門用語も業務フローも分からず、営業からの依頼の意図が汲み取れず、書類不備や抜け漏れで迷惑をかけてしまった。
③ そこで「自分一人で抱え込まない」「毎週1つは改善する」を決め、週1回先輩との1on1ミーティングをお願いし、「今週できなかったこと」「なぜズレたか」「来週どう変えるか」を毎回フィードバックしてもらった。
④ フィードバックを受けたら必ず翌週に1つ改善を実行し、「見積もり依頼を受けたら、過去案件も一緒に出しておく」など、先回りのサポートができるように工夫を重ねた。
⑤ 半年後には「あなたがいてくれないとチームが回らないから、このまま社員になってほしい」と営業リーダーから引き留められるまでに信頼を得ることができた。
⑥ この経験から、メーカーのような多部署連携の現場では、一人で抱え込まずに周囲に頼りながら、粘り強く仕事の質を上げていく姿勢が重要だと学んだ。
メーカー向けガクチカでは、「自分一人で突っ走る」より「周りに相談しながら、粘り強く仕事の質を上げていく姿勢」が評価されます。派手な数字よりも、「先輩から“いてくれないと困る”と言われた」「引き留められた」という信頼の証があると強いです。
人材業界:大量の“人×状況”に合わせた提案経験が光る
人材業界のガクチカに向く経験は?
トイさん:人材は“相手が人”のビジネスで、かつ扱う人数も多くなります。接客業やCS(カスタマーサポート)系のアルバイトで、相手ごとに提案内容を変えた経験があると非常にフィットします。
アルバイト版 理想ガクチカ例(SNS運用での顧客対応)
トイさん:たとえば、店舗やサービスの公式SNS運用アルバイトでもこう組めます。
① とある企業の公式SNSアカウント運用をアルバイトとして任され、「おもしろ投稿でフォロワーを増やしてほしい」と依頼を受けた。
② 自分自身が個人SNSを運用していた経験から、「フォロワー数より、コメントしてくれる“濃いファン”が増えた方が来店につながる」と仮説を立てる。
③ 上司に相談のうえ、すべてのコメントに「いいね」だけでなく、一言メッセージで返信する方針に変更。「前にも書いてくださった◯◯さんですよね、いつもありがとうございます」など、投稿者ごとの履歴を踏まえた返信を徹底した。
④ 名前を覚えて返信するようになってから、「今度お店に行きます」「このメニュー食べてみたいです」といったコメントが増え、来店報告投稿も目立つようになった。
⑤ キャンペーン期間中には、SNS経由での来店者が月間+100名となり、店長から「SNSが一番効いている」と評価された。
⑥ この経験から、一人ひとりの背景を踏まえて言葉を変えることで、人の行動を変えられることにやりがいを感じ、人と企業のマッチングを支援する人材業界で働きたいと考えるようになった。
人材向けガクチカでは、「大量の人を“ひとまとめ”に扱わず、一人ひとりの状況に合わせて提案やコミュニケーションを変えた」経験が強みになります。数字(来店数UPなど)とセットで、「相手の名前を覚えて返信」「履歴を見たうえでの提案」など、個別対応の工夫を具体的に語りましょう。
