“自己実現をしろ”“やりたいことを見つけろ”というメッセージが就活にはあふれています。でも本当に、就活の段階でそれが見つかっていなければダメなのでしょうか。今回の対談では、成田さんが「やりたいことがない前提」で就活・キャリアをどう捉えているのかを整理していきます。
自己紹介
しゅん
自己紹介をお願いします!
成田さん
成田悠輔です。研究や事業をやりつつ、いろんな場所でしゃべっています。今日は“就活をどうゲームとして捉えるか”という話ができればと思います。
トピック①:今中学生だったら、どの会社に行きたい?
しゅん
もし今、中学生や大学生の年齢だったら、どんな会社に行きたいですか?
成田さん
どこも行きたくないです。
しゅん
いきなり(笑)。じゃあ、なぜ人は会社に入るといいんでしょう?
成田さん
まだやりたいことがない人にとっては、「安心感と最低限の収入を得る場所」として、会社に所属する価値はあると思います。
💡ポイント
「会社に入りたいかどうか」と「会社に入る価値があるか」は別。やりたいことがない人にとって、会社は“安心と最低限の生活”を提供してくれる場所。“行きたくて入る”というより、“ツールとして使う”という視点も持っていい。
「会社に入りたいかどうか」と「会社に入る価値があるか」は別。やりたいことがない人にとって、会社は“安心と最低限の生活”を提供してくれる場所。“行きたくて入る”というより、“ツールとして使う”という視点も持っていい。
トピック②:会社は“ツール”であり“コマ”──就活はゲームでいい
しゅん
日本は、ネームバリューやブランドで人が判断されがちですよね。
成田さん
そうですね。だから、無償で何かするよりも「大企業に入っている」という事実の方が、社会的には評価されやすい。そういう意味で、「会社に入る価値」はツールとしてかなり大きいです。
成田さん
就活って、「やりたいことは何か」「何を目指すべきか」という“べき論”になりがちだけど、もっと気楽に“自分の人生にとって大事なコマを揃えるゲーム”としてやってもいいと思っています。
💡ポイント会社は「人生で使えるコマ(ツール)」のひとつに過ぎない。就活を“自己実現の最終解”として扱うと重くなる。「自分の人生で使える札を増やすゲーム」と捉えると、少し気が楽になる。
トピック③:「やりたいことがない」人のほうが多数派で、別にいい
しゅん
やりたいことがない就活生へのアドバイスは?
成田さん
もし本当に“絶対にこれがやりたい”というものがあるなら、その人はそもそも就活なんてしていないと思います。就活をしている時点で、「まだ圧倒的な情熱や欲求はない」ということだと思うんですが、それでいい。
成田さん
だからこそ、「自分に合うものを見つけなきゃ」「人生をかけて極める道を見つけなきゃ」と焦るより、「今後どこに進んでもオプションが増える会社」を狙う、くらいでいいと思うんです。
💡ポイント
就活をしている=「まだ燃え上がるほどの“これだ”がない」のサイン。その状態は“普通”であって、欠陥ではない。だからこそ、「オプションバリューが高い選択肢」を狙うのが合理的。
就活をしている=「まだ燃え上がるほどの“これだ”がない」のサイン。その状態は“普通”であって、欠陥ではない。だからこそ、「オプションバリューが高い選択肢」を狙うのが合理的。
トピック④:何者かになりたいなら、「ブランドと数字のゲーム」を割り切ってプレイすればいい
しゅん
「何者かになりたいけど、やりたいことはない」という人も結構多い気がします。
成田さん
一番分かりやすい「何者か」って、結局“ブランドかお金”なんです。普通に有名な会社で出世する、あるいは時価総額の大きい会社を作る。このゲーム以上でも以下でもないことが多い。
成田さん
僕たちが「すごい企業家だ」と思っている人も、多くの場合は“資産をたくさん持っているから”そう感じているだけ。中身はただのおじさんです。
成田さん
ビジネス領域の「何者かになる」は、かなりの部分が「数字と肩書きのゲーム」だと割り切った方が楽だと思います。
💡ポイント
ビジネスの「何者か」は、“人格”より“数字と肩書き”で測られがち。「なんとなくすごく見える」は、多くの場合「お金やブランドの影響」。ゲームだと割り切れば、「勝つ/勝たない」を自分で選べるようになる。
ビジネスの「何者か」は、“人格”より“数字と肩書き”で測られがち。「なんとなくすごく見える」は、多くの場合「お金やブランドの影響」。ゲームだと割り切れば、「勝つ/勝たない」を自分で選べるようになる。
トピック⑤:二つの生き方──“ルールの中で勝ち切る”か“ボン踊りおじさん”か
しゅん
成田さんが考える2つの生き方について聞かせてください。
成田さん
生き方って、ざっくり二通りあると思っていて。1つ目は、「ルールが確定しているゲームで勝ちまくる」。例えば、大企業で最速出世する、霞が関で偉くなる、時価総額◯◯の会社を作る、など。もうルールもサンプルも整備されている世界です。
成田さん
2つ目は、それらのルールを全部無視して、「誰もやっていない“ボン踊り”的なこと」をやる生き方。新しいキャリアや生き方を開拓する側ですね。
成田さん
前者ならキャリアプラン・戦略を立てる意味はあるけど、後者ならむしろ「戦略なんて立たない」のが自然だと思います。
💡ポイント
「既存のルールの中で勝つ」と「ルール外で踊る」は、別のゲーム。前者はキャリアプランが有効、後者は偶然とノイズが重要になる。“自分はどっちのゲームをやりたいか”を意識すると迷いにくくなる。
「既存のルールの中で勝つ」と「ルール外で踊る」は、別のゲーム。前者はキャリアプランが有効、後者は偶然とノイズが重要になる。“自分はどっちのゲームをやりたいか”を意識すると迷いにくくなる。
トピック⑥:10年単位の変化は、どうせ予測できない
成田さん
よく言われるのが、「人間は1年の変化を過大評価し、10年の変化を過小評価する」という話です。
成田さん
1年前と今を比べると、そこまで大きく変わっていないように感じる。でも10年前と今を比べたら、世界がまるごと変わっていたりしますよね。
成田さん
10年スパンでは、「偶然の出会いやたまたまの機会」といった、予測不可能な要素の影響がどんどん大きくなる。だから、10年後のキャリアを頭で計画しても、ほとんど当たりません。むしろ「目の前の仕事に盲目的に取り組み続ける」ほうが、長期的には価値を生むことが多いと思います。
💡ポイント
10年単位のキャリアは、頭でプランしてもほぼその通りにはならない。偶然や出会いの影響が大きすぎて、長期プランは“参考程度”にしかならない。だからこそ、「目の前の仕事をちゃんとやる」が一番の長期戦略になり得る。
10年単位のキャリアは、頭でプランしてもほぼその通りにはならない。偶然や出会いの影響が大きすぎて、長期プランは“参考程度”にしかならない。だからこそ、「目の前の仕事をちゃんとやる」が一番の長期戦略になり得る。
トピック⑦:意識高いコンテンツを見すぎると、逆に迷う
しゅん
就活生が意識高い系のコンテンツを見ることは有効だと思いますか?
成田さん
意識高いメディアには、一つの矛盾があると思っていて。メディアとしては、コンテンツを面白くするために「ルールからズレた・新しい生き方」を紹介したい。でも同時に、「誰でも真似できるノウハウ」としても届けたい。
成田さん
新しい生き方ほど、本来はマニュアル化できないはずなのに、マニュアルっぽく紹介される。その矛盾があるので、あまりこういう意識高いコンテンツを真に受けすぎない方がいいと思います。
成田さん
本当は、「有名大企業で最速で執行役員になるマニュアル」や「時価総額1000億の会社を作るための具体ノウハウ集」のほうが再現性もあって、教科書として価値があるはずなんですけどね。
💡ポイント
“カッコいい生き方事例”は、そもそも真似しづらいから面白い。それを“誰でもできますマニュアル”にされると、逆に迷いの元になる。意識高いコンテンツは「眺めるもの」であって、「そのままトレースするもの」ではない。
“カッコいい生き方事例”は、そもそも真似しづらいから面白い。それを“誰でもできますマニュアル”にされると、逆に迷いの元になる。意識高いコンテンツは「眺めるもの」であって、「そのままトレースするもの」ではない。
トピック⑧:幸せとステータスは、ほとんど関係ない
しゅん
ここまでの話って、“キャリアゲーム”の話だと思うんですけど、幸福の話とは違いますよね?
成田さん
そうですね。資産家になろうが、時価総額の高い会社を作ろうが、それと「その人が幸せかどうか」はほぼ無関係だと思います。
成田さん
人との比較を離れて、自分の物差しを持っている人は幸せそうだなと感じる一方で、「強すぎる物差し」で周りを不幸にする人もいる。
しゅん
じゃあキャリアの話(会社・資産・肩書き)と、幸せの話は、基本的に切り離して考えた方がいいんですね。
💡ポイント
“勝ち組っぽい”キャリアと、本人の幸福度は別問題。「自分の物差しを持つ」ことは幸福度を上げる一方、周囲に悪影響を与えるケースもある。キャリアのステータスをどうするかと、どう幸せを感じるかは別々に設計する必要がある。
“勝ち組っぽい”キャリアと、本人の幸福度は別問題。「自分の物差しを持つ」ことは幸福度を上げる一方、周囲に悪影響を与えるケースもある。キャリアのステータスをどうするかと、どう幸せを感じるかは別々に設計する必要がある。
トピック⑨:成田さんが今22歳なら?
しゅん
もし今、成田さん自身が22歳の学生だったら、どう生きますか?
成田さん
たぶん、「ちょっとでも有名な会社に入って、ドヤ顔で自慢できるように頑張る」と思います(笑)。“会社に所属するか否か”はツールの問題ですが、「ゲームをプレイする」という意味では、分かりやすく難しい会社に入るのも、普通にアリだと思っています。
💡ポイント
“ゲームとしてのキャリア”を選ぶなら、「難しい会社に入る→そこで勝つ」は分かりやすい戦略。「やりたいことがないからこそ、ブランドとオプションが増える選択肢を取る」は合理的。そのうえで、幸福や自分らしさは別軸で考えていけばいい。
“ゲームとしてのキャリア”を選ぶなら、「難しい会社に入る→そこで勝つ」は分かりやすい戦略。「やりたいことがないからこそ、ブランドとオプションが増える選択肢を取る」は合理的。そのうえで、幸福や自分らしさは別軸で考えていけばいい。
まとめ
✔️やりたいことがないまま就活しているのは普通であり、その状態は「悪いこと」ではない
✔️会社は「安心・収入・ブランド・オプション」を得るための“コマ(ツール)”として捉えていい
✔️何者かになりたいなら、「ブランドと数字のゲームをどうプレイするか」を意識する
✔️10年単位のキャリアは予測不能で、長期プランより“目の前の仕事に向き合うこと”が重要
✔️ステータスと幸福はほぼ無関係で、幸せの物差しは自分で持ちつつ、キャリアゲームはゲームとして遊べばいい
成田さん
やりたいことがなくても、就活はしていいし、いい会社を目指してもいい。ただ、“自分の人生で使えるコマを増やすゲーム”くらいの距離感で、もう少し気楽にプレイしてみてください。
